【花】 |
直径3〜4ミリの可憐な花が手品のように次々と咲いていき、盛花期のそば畑は白一色に染まる。まさにそばを『花蕎』、『華麦』と表すとおりの美しい景観が楽しめます。 |
開花始めの頃 |
開花盛期の頃
(花房にたくさんの花がつく) |
花は簡単に咲く
そばは霜の害さえ出会わなければ粗放な栽培でも花を咲かせることが出来ます。
しかし実際結実し、収量を得るとなると簡単ではない。
それはそばの植物的、生態的特徴が要因となっています。 |
花の植物的特徴
【無限花序】
そばの花はある決まったパターンで少しずつ手品のように次から次へと咲いていく。これを『無限花序』という。
【異形ズイ現象】
そばの花には『長柱花』と『短柱花』の2つの形があり、それはひと株毎にちがっている。
すなわち同じ株にふたつの形の花が一緒につくことはなく、ひとつの株はいずれか一方の形の花のみをつける
これは自花の花粉で受粉することができない構造となっている。
すなわち長柱花の花粉は短柱花の柱頭に、短柱花の花粉は長柱花の柱頭に授粉して授精する。
このことを『適法授粉』といい、反対に長柱花同士、短柱花同士の授粉を『不適法授粉』という。よって1本のそばだけでは実にならない。また何本あっても同じ形の花ばかりでは実りません。
下図で示すように柱頭の長さが異なるため長柱花の花粉と短柱花の花粉の大きさも変わってくる。
これは授精のときに伸ばす花粉管の距離の差の関係で、短柱花の短い柱頭に授粉した長柱花の花粉では、伸ばす花粉管の距離が短く、その分エネルギーが少なくてすむし、逆に長柱花に授粉した短柱花の花粉は花粉管を伸ばすために大きいエネルギーが必要になってくる。
結果、花柱管を伸ばすめの栄養源になるカロリーに違いが出てくる。
したがって、長柱花の花粉は小さく、短柱花の花粉は大きい。
このように花の形が異なることにともなう一連の現象を『異形ズイ現象』とよぶ。
【花の形の割合】
長柱花と短柱花の花の出現率はほぼ半々である。 |
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花の生態的特徴
【花は咲き続ける】
そばは日長と温度が適当であればいつまでも咲き続ける作物である。つまり『栄養成長』と『生殖成長』が同時におこなわれ、片や実をつけながら一方では成長し続けて花房をつけて咲き続けるのである。
【花は咲いても実にならない】
実になる割合は計算上で最大50%となるが、実際は授精したときの条件(温度、花粉及び雌しべの健全度)により変わってくる。ただし割合は落ちていくことはあっても増えることはない。
よって条件が合わなければ無駄花ばかりで収穫なしということもある。 |
花と結実
花が咲くいても実にならない。その主な原因は
・不完全な雌しべ【衰弱花】
・授粉時の温度
・他家受粉
等が上げられる。
【衰弱花】
長柱花、短柱花に関係なく、雌しべが正規の大きさに達しなく受精能力を持たない花。実はこの衰弱花の発生が結実歩合を落としている。
【衰弱花の発生現象】
・高温と長日期(夏)に多く発生、低温と短日期(春、秋)には少ない。
・特に秋そばは長日処理で衰弱花が大変多く発生し、短日処理で少ない。
※春蒔いた秋そばは実にならないのです。
・開花最盛期を過ぎると多くなる。
・同じ地域でも低地の比較的暖かいところで多く、山間地の比較的寒いところで少ない。
・三要素のリンサンが不足すると衰弱花が多くなる。土壌と施肥を参照 |
【適温】
授粉するときの温度により柱頭への花粉の付着数が変わってくる。これはメシベの柱頭に分泌する粘液の量に関係しており、温度が高すぎても低すぎても分泌量が少なくなる。20度位が最も分泌が多く、上は40度以上から、下は15度以下からその量は激減する。またこの粘液の分泌は、受粉だけでなく受精にも大きな影響がある。
通 常そばの開花時刻は早朝に起こり、午前中には受精が終わってしまう。
したがって、午前中の降雨は適温まで温度上昇させる妨げとなり、その分粘液が減少して花粉をうまく捕らえることが出来なくなる。また、それは受精にとっても悪影響を与える。
【他家受粉】
異形ズイ現象によりそばの授精はミツバチ、アリ、イチモンジセセリ、ハエ等の昆虫によって行われる。
したがって、開花期間中の農薬(殺虫剤)散布は昆虫の活動を低下させて授精率を低下させる。
また、栽培面積も小面積ばかり(虫食い状態)では昆虫の活動も少なくなる(昆虫も飛散して蜜を集めるより、大面積の一ヶ所から能率良く蜜を集める方法を選択する)。
※そばの場合風媒による受粉は期待できない。
※自家受粉のダッタンそばは当然結実率(収量)がよい。 |